「税理士はM&Aで稼げるのか」。よくいただくご質問に、今回は正直にお答えします。仲介がいいのか、どんな支援モデルがいいのか——仲介もセカンドオピニオンもDDもPMIも、すべて経験してきた立場から本音で解説します。
よくあるイメージは、「成功報酬で一発大きい、少なくとも500万円以上」といったものでしょう。宝くじのように一発当てて大きいから夢がある、と。では、実際はどうなのか。
結論から言えば、稼げます。ただし「仲介」ではなく「継続支援モデル」で、です。
なぜ「仲介」は難しいのか
まず、仲介そのものが難しいという現実からお話しします。
- 案件が少ない:売り手を探すのも、マッチングも難しく、初期の壁が厚いのが実情です。
- マッチングが大変:条件の合う相手を見つけるのは至難の業です。特に売り手が条件にこだわる場合、相手探しは一段と難しくなります。数十件に1件、という感覚に近いこともあります。
- 交渉が難しい:価格・条件の調整には専門的な交渉力が必要です。顧問業をこなしながらそこに深く関与するのは、物理的にも簡単ではありません。しかも、どれだけグリップしていても「やめた」の一言でそれまでの交渉が水の泡になる世界です。
税理士が仲介をやると——再現性が低く、リスクが高い
仲介は、税理士にとって次の点でも相性が良くありません。
再現性が低い
運良く1件目が決まっても、それはまぐれであることが多く、次が続きません。安定した収入にはなりにくいのが現実です。
リスクが高い
利益相反の問題、説明責任、そして法的リスク。高報酬であるがゆえに、これらのリスクものしかかってきます。
顧問業と相性が悪い
顧問業との両立は簡単ではありません。何か失敗したとき——あるいは成功しても「説明責任を果たしていないのでは」と追及されたとき——顧問先そのものを失いかねません。本業が顧問である私たちにとって、これは見過ごせないリスクです。
では、税理士はどこに立つべきか——「仲介ではなく支援」
はっきり申し上げます。私たちは仲介ではありません。もちろん、誰も引き受け手がいない小さなM&Aでは、税理士がやらざるを得ない場面もあります。しかしそれ以外は、案件発掘・マッチング・価格交渉・契約締結を主導してくれる仲介業者に紹介するのが基本です。
そのうえで、私たち税理士は自身の強みを活かした支援に立ちます。
- セカンドオピニオン:仲介会社が提示したIM(企業概要書)などの資料を税理士目線で検証し、リスクを事前に洗い出します。
- DD(デューデリジェンス):財務・税務の詳細な調査と問題点を、私たちの強みである「数字」で把握・検証します。
- PMI(統合支援):統合に必要なタスクを洗い出し、リストアップして進めます。
収益イメージ——成功報酬ではなく「月額×積み上げ」
収益の考え方は、成功報酬ではなく月額です。1件あたり月額5万〜15万円を、規模や作業内容に応じて設定します。そして複数案件を積み上げていきます。
たとえば1件5万〜10万円、3件で15万〜30万円、さらに——という形で積み上がっていくイメージです。
この継続支援モデルの3つの強み
① ストック型で経営が安定し、差別化にもなる
顧問業務と同じく、お客様が積み上がれば月額も積み上がるストック型です。成功報酬の一発狙いと違い、何より事務所経営が安定します。加えて、こうしたM&A支援を提供できる事務所はまだ少なく、それ自体が強力な差別化要素になります。この仕事が先生の事務所に集まる、と言っても過言ではありません。
② リスクが低い
仲介モデルでは法的・倫理的リスクが伴いますが、伴走型の支援モデルであればそれらは小さくなります。むしろ「このM&Aはやめましょう」と助言できることで、信頼はかえって深まります。
③ 顧問と相性が良い
顧問先がそのまま、このM&A支援モデルのお客様になります。つまり新規開拓が不要でスタートできます。これまで積み上げてきた財務資料があり、先生とお客様の間に信頼関係がある——これが非常に大きなアドバンテージです。
結論:稼げる。ただし「継続支援モデル」で
税理士はM&Aで稼げます。ただし、成功報酬の仲介ではなく、セカンドオピニオン → DD → PMI → 顧問という継続支援モデルで進めてください。ストック型で事務所経営を安定させながら、顧問先の役に立つ——これが、私たち税理士の強みを最も活かせる道だと考えています。
これからも、この流れの具体的な進め方をテーマに発信してまいります。
