M&Aは怖いもの——そんなイメージをお持ちの先生も多いのではないでしょうか。本当に、怖いです。
正直に申し上げます。私は、M&Aで失敗した税理士です。恥ずかしい話ではありますが、その失敗と、それでもなお「税理士はM&Aに関わるべきだ」と考えるようになった理由をお話しさせてください。
私がM&Aで失敗した話
実際に起きたことです。私はM&Aの支援に失敗し、顧問先に迷惑をかけました。
迷惑をかけたのは顧問先だけではありません。信頼していただいていたのに、その期待に応えられなかった。これが非常に辛いことでした。
さらに、私自身のM&A(事業売却)も、思ったような結果にはなりませんでした。計画通りには進まない——M&Aの現実の厳しさを、身をもって痛感しました。
とても苦い経験でした。「もうM&Aには関わりたくない」と本気で思った時期もあります。正直、しんどかった。辛かった。そうして私は、1年半にわたってSNSをはじめとする公での発信を止めていました(というより発信できる精神状態ではありませんでした)。
それでも、税理士はM&Aに関わるべきだ
しかし、気持ちに変化がありました。いろいろな方のお話を聞くなかで、やはり税理士はM&Aに関わるべきだと確信するようになったのです。
結論として、税理士はM&Aにおいて顧問先の役に立つことができます。 これが、私が発信を再開した理由です。そして、失敗したからこそ見えてきたことがあります。その理由を3つ、お話しします。
① 社長が本音を話せる関係がある
何年もかけて築いてきた関係があります。だからこそ、社長は本音を話してくださいます。もしかすると、親戚よりも深い信頼関係を築けている社長もいらっしゃるのではないでしょうか。
信頼関係があるからこそ、M&Aの悩みはまず顧問税理士に相談されます。他のどの専門家よりも近い存在にいる——とても動きやすい立場なのです。
② 数字が分かる、財務・税務のプロフェッショナルである
私たちは財務諸表や決算書を読み、隠れたリスクを見抜くことができます。それだけでなく、税務面での落とし穴を事前に指摘することもできます。
M&Aの仲介会社では気づけないかもしれない数字の問題を発見できる——これは、先生方だからこそできることです。
③ 3つを兼ね備えているのは税理士だけ
社長との信頼関係があり、その社長の性格を知っていて、財務も理解したうえで、第三者として冷静に見ることができる。
この3つを兼ね備えているのは、税理士しかいません。仲介会社にも、弁護士にもできない役割があります。これは決して、弁護士や仲介会社が悪いという話ではありません。役割の問題です。
だからこそ、「関わり方」が重要になる
ただし、関わり方を間違えると大変なことになります。
仲介に踏み込みすぎると、利益相反が生じるリスクがあります。その結果、守るべき顧問先を傷つけてしまうことさえあります。
これが私が失敗から学んだ教訓です。
一方、正しく関わることができれば、信頼はさらに深まります。顧問先を守ることができ、継続的な支援ができ、一歩踏み込んだ支援ができる。これこそが、私たちが目指すべきM&Aの関わり方です。
結論:正しく、専門家として顧問先を支える
税理士はM&A支援に関わるべきです。ただし、正しく。
仲介としてではなく、専門家として顧問先を支える立場で。セカンドオピニオン、DD(デューデリジェンス)、PMI(統合支援)、そして月額顧問——この一連の流れで支援していく。この形であれば、私の失敗から学び、顧問先を守ることができます。
私が発信を続けている理由は、ここにあります。私と同じ失敗をしてほしくない。先生方が失敗する必要はありません。私が経験した苦労を、皆さんに繰り返してほしくない——そう考えて発信しています。
失敗があったからこそ、当事者として伝えられることがある。その思いで、これからも続けてまいります。
