M&A仲介会社との契約で注意すべきこと7選——署名前に必ず確認したいチェックポイント

M&Aを検討するにあたって、売り手でも買い手でも、仲介会社と契約を交わす場面があります。あるいは、そうした顧問先を抱える士業・税理士の先生もいらっしゃるでしょう。

今回は、そういう方に向けて「最低でもここだけはチェックしておこう」という7つのポイントをお話しします。この7つさえ確認すれば、基本的に大きな事故は防げます。

なぜ契約書の確認が重要なのか

仲介会社からすれば、契約はさっさと終わらせて、早く本題に入り、早く成約させたいわけです。それ自体は、相手を探してほしい・成約したいという皆さんの利害とも一致します。

ただし、気をつけるべき点があります。「一般的な内容ですから」と言われるままに印鑑を押してしまうと、後で困ることになります。まずは、その「困った事例」をご紹介します。

事例:ある船舶部品メーカーのケース

創業40年、従業員約35名、黒字。テレビCMで見た仲介会社に問い合わせ、訪問してきた担当者と10ページ近い契約書を「一般的な内容ですから」と締結しました。

ところが、なかなか買い手が決まりません。価格が合わない、取引難易度が高いといった理由で紹介された会社とも折り合わず、破談に。仲介は「候補先を探しています」と言うものの、鉄の価格は上昇し、社長の体力も奪われ、不安が募っていきます。

そんなとき、経営者仲間から「製造業のM&Aに詳しい会社を知っている」「他の仲介も見てみたら」と声をかけられます。新しい仲介会社に前の契約書を見てもらうと、担当者の表情が曇りました。「この契約ですと、当社が正式に買い手探しをするのは難しいですね」——理由は専任条項でした。

では解除すればよいかというと、解約してもなおテール条項が残ります。契約終了後も紹介先との成約には成功報酬が発生し、しかもその対象が紹介企業だけでなく親会社まで及ぶ、非常に広い範囲のものでした。契約中は他社に頼めず、解約後も自由に動けない——「こんなことがまかり通るのか」というご相談でしたが、まかり通るのです。

こうならないために、次の7つを確認してください。

7つのチェックポイント一覧

まずは7つのチェックポイントを表にまとめましたので、ご確認ください。

詳細はひとつずつご説明いたします。

#チェックポイント特に見るべき点
1専任か非専任かセカンドオピニオン相談の可否
2仲介かFAか利益相反の有無
3契約期間・自動更新期間の妥当性と自動更新の有無
4中途解約・予告期間解約可否・予告日数・違約金
5テール条項期間・対象範囲・リスト交付・「紹介」の定義
6自分で見つけた相手仲介を通す必要があるか
7成功報酬以外の費用着手金・月額・中間金の有無

1. 専任か非専任か

まず、専任か非専任かです。

  • 専任:他社に重ねて依頼できないデメリットがある一方、情報管理を一本化しやすいメリットもあります。ただし事例のように、仲介会社の動きが鈍くても動けない状況が起こり得ます。
  • 非専任:複数の仲介会社に同時に依頼でき、比較競争が働きやすいメリットがあります。反面、仲介会社からすると「他社が入っているなら自社で成約しないかもしれない」と後回しにされる可能性もあります。

双方にメリット・デメリットがあります。社長と先生方で話し合い、どちらにするかを検討してください。あわせて、他の仲介会社・金融機関・顧問税理士・顧問弁護士に相談してよいか、セカンドオピニオンに入ってもらってよいかも必ず確認しましょう。これすら禁じる契約があるため、ここは要注意です。

2. 仲介かFAか

2番目は、仲介かFA(フィナンシャル・アドバイザー)かです。

  • 仲介:買い手・売り手の双方から手数料が発生します。一社が調整するため早いのがメリットですが、利益相反というデメリットがあります。成約させるために、力の強い側に有利な方向へ誘導されることがあり得ます。
  • FA:売り手・買い手のどちらか片側につきます。関係者が必ず2社になるため手数料は片側からのみで、その分やや遅くなる傾向があります。

「ならFAがよい」と思われるかもしれませんが、小規模M&AではFAを引き受けてくれない会社もあり、結局はFA同士の調整になるため「仲介と同じ」と言われることもあります。どちらを取るか、これも他の仲介会社・金融機関・顧問税理士・顧問弁護士に確認し、事前に一緒に考えることが必要です。

3. 契約期間・自動更新

契約期間は何か月か、自動更新されるかを確認します。

通常は1年程度が妥当です。短すぎると動けず、長すぎると解約しにくくなります。問題は自動更新で、解約を申し出ない限り1年更新となると、なかなか解約できません。「気づいたら更新されていた」を防ぐため、契約前に確認しておきましょう。

4. 中途解約・予告期間

中途解約はできるのか、予告期間は何日前かです。

買い手(あるいは売り手)がなかなか見つからない場合、中途解約が視野に入ります。そもそも解約という選択肢があるのか、予告期間は何日前か、そして稀に違約金などの条件が発生する場合があるため、あわせて確認してください。

5. テール条項

5つ目はテール条項です。契約終了後も一定期間内に、仲介会社が紹介した相手と成約すれば成功報酬が発生するというもので、いわゆる「仲介会社飛ばし」を防ぐ仕組みです。仕組み自体は悪いものではありませんが、これを悪用して非常に厳しい条件を設定している場合があります。

確認すべきは次の4点です。

  • 期間:事例では契約終了後2年間でした。業界の相場感(おおむね1〜2年)と比べて長すぎないか。
  • 対象範囲(こちらの方が重要かもしれません):紹介された会社に限定されていれば問題ありませんが、親会社・子会社・関連会社・グループ会社まで含むなど範囲が広すぎると問題になります。できるだけ絞りましょう。
  • 対象会社リストの交付:契約終了時に対象会社リストを出してもらえれば、どこがテール条項に該当するか明確になります。この資料を出してもらえるかを確認しましょう。
  • 「紹介」の定義:面談だけでなく、社名を伝えただけ・ノンネーム資料を送っただけの相手まで対象になると範囲が広くなります。ここも確認が必要です。

6. 自分で見つけた相手も仲介を通すのか

専任契約であっても、自分で開拓した候補との交渉は仲介を通さなくてよい場合があります。取引先や知人、あるいは親戚の会社を買うといったケースです。これに対応してくれる仲介会社もありますので、話し合っておきましょう。

7. 成功報酬以外の費用

最後は、成功報酬以外の費用が発生するかです。M&Aの仲介料は基本的に成功報酬ですが、稀に着手金・月額報酬・中間金が発生する契約もあります。金額・タイミング・返金の有無を、契約前に確認することをおすすめします。

まとめ

改めて、確認すべき7つはこちらです。

  1. 専任か非専任か
  2. 仲介かFAか
  3. 契約期間・自動更新の有無
  4. 中途解約の有無・予告期間
  5. テール条項の期間・対象範囲・リスト交付
  6. 自分で見つけた相手も仲介を通すのか
  7. 成功報酬以外の費用(報酬体系)

少なくともこの7つは、必ず確認してください。

不安があれば、署名前に専門家へ相談を。まずは弁護士がいれば一番です。いない場合は、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関、M&Aに詳しい中小企業診断士なども頼りになります。また、テール条項などのトラブル事例は、中小企業庁が発行する中小M&Aガイドラインに掲載されていますので、あわせてご確認ください。

契約書を理解し、理解したうえで署名すること。それが、会社と従業員を守る第一歩になります。ぜひ実践してください。

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執筆者

都 鍾洵(みやこ しょうじゅん)のアバター 都 鍾洵(みやこ しょうじゅん) 税理士/買収顧問・みやこ税理士事務所 代表

M&A伴走税理士。月次顧問を土台に、買い手支援を主軸として財務DD・M&A実行・統合後支援(PMI)まで一気通貫で伴走する。譲渡を考える経営者の出口設計にも応じ、税務・財務の両面から意思決定を支える。マイクロM&A士協会代表。NHK出演・幻冬舎ゴールドオンライン連載・著書『無責任廃業』。兵庫県西宮市を拠点に全国対応。